フランス菓子の修業を始めたばかりの頃。先輩たちが帰った誰もいない調理場の片隅で、一人でコツコツとお菓子の試作をするのがわたしの密かな楽しみでした。ある時、眠い目をこすりながら、チーズケーキを焼いていた時に、うっかり薄力粉の分量を少なくして作ってしまいました。気を落としながらも、目の前にある焼きあがったばかりのチーズケーキをひと口食べてみると、しっとりとした舌ざわりでコクがあり、実においしかったのです。自分の常識や想像を超えたところに、おいしさって隠れていることがあるんですね。以来、わたしのチーズケーキは粉を一切使わずに作ります。
「絹フロマージュ」は、結城紬をイメージして作ったチーズケーキです。デンマーク産のクリームチーズにフレッシュクリーム、那須高原の地鶏の卵を贅沢に使い、じっくりと絹のような口あたりに焼き上げました。アルチザンだけのスペシャルなチーズケーキは、誰に贈っても驚きや感動を与えられるようにとお客様一人一人のために、心を込めて焼き上げました。